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Recombinant Virus Database

「挿入遺伝子とRCAの確認」

理研DNA Bankから組換えアデノウイルスの提供を受けた場合、あるいは研究者間のやり取りで組換えウイルスを受取った場合、いずれもその量だけでは目的の実験に十分な量はありません。そこで、組換えウイルスを増幅し、検査の後、精製し、力価を算出して使用します。

以下は、アデノウイルスを得てから使用するまでの手順の概要です。

  1. アデノウイルスの増幅
    理研DNA Bankが提供する組換えアデノウイルスはウイルス感染細胞ライセートとしてお送り致します。力価は測定していませんが,おおよそ106-8 pfu/mlの液を100 μl お送りいたします。お受け取り後は直ちに培養を開始してください。直ちに培養ができない場合は-80℃で保管し、なるべく早く培養して下さい。
    操作方法)
    10 cmコラーゲンコートディッシュに培養した293 細胞(培養液10ml, 約9x106 cells)を用意する。
    ウイルス液を100 μl感染させる(「組換えアデノウイルス作製マニュアル ~クローン化ゲノム導入法~」Protocol C-1 ,3, 4 次ウイルス感染プロトコール参照)。
    約3~4 日後に細胞が死滅したら、約10mlの培養液を細胞ごと(死滅細胞ごと)50 mLチューブに回収する。すぐに使わない場合は粗ウイルス液としてそのまま-80℃に保存する。すぐに使用する場合は、密閉超音波破砕または凍結融解し、ウイルスを遊離させ,9,400 g、10 分、4℃で遠心して上清を回収しウイルス液として使用する(ウイルス液約10mlが得られる)。残りは、蓋がネジ式のチューブに分注して.80℃に保存する。
    この後、「組換えアデノウイルス作製マニュアル ~クローン化ゲノム導入法~」の「組換えウイルスの超遠心による大量調製」に従って、ウイルス粒子を精製してください。
    参考
    「組換えウイルス標準操作手順書集(日本語)」
    「組換えアデノウイルス作製マニュアル ~クローン化ゲノム導入法~」
    「別冊実験医学 ザ・プロトコールシリーズ 遺伝子導入&発現解析実験法羊土社」
    組換えアデノウイルスの輸送ならびに保存時の安定性についてはこちらの報告ならびに Ugai, H. et al., Jpn. J. Cancer Res., 93, 598-603 (2002).をご覧ください。

  2. 組換えウイルスの検査
    理研DNA Bankの自律増殖欠損型組換えアデノウイルスは、そのほとんどがCOS-TPC法により作製されており(Miyake S. et al., 1996)、自律増殖可能なアデノウイルス(Replication Competent Adenovirus, RCA)が混入する恐れがあります。また、組換えアデノウイルス増殖過程でも宿主であるHEK293細胞の持つE1遺伝子を組み換えにより獲得することが報告されています。そこで、組換えアデノウイルスを使用する前には、RCAが存在しないことを確認する必要があります。また、組換えアデノウイルスに限らず、組換えDNAクローンは突然変異を起こす可能性があります。そこで、組込み遺伝子(ファイバー変異体アデノウイルスはファイバー領域も)の性状を実験の前に調べて下さい。その方法として、PCR、DNAシーケンシングあるいはウエスタンブロッティングが考えられます。
    1. RCA混入検査のための感染細胞の調製 [GO ->]
      自律増殖欠損型組換えアデノウイルスが増殖できないHeLa細胞にウイルスを感染させることで、自律増殖可能アデノウイルスを増殖させます。

    2. アデノウイルス感染細胞からの全DNA抽出 [GO ->]
      ウイルスを感染させた細胞のcell packから全DNAを抽出します。

    3. DNAの確認とPCR [GO ->]
      1. 「染色体DNAを含むアデノウイルスゲノムDNAの制限酵素切断」参照
      2. 「PCR 法による挿入遺伝子の確認」参照
      3. 「PCR法によるRCAの確認」参照
        自律増殖欠損型組換えアデノウイルスはE1領域を欠損しています。そこで、E1領域の有無を検査することによりRCAの混入を検出します。

  3. 組換えアデノウイルスの超遠心による精製 [GO ->]
    手早く行えば、精製は2時間で終了します。


組換えアデノウイルス操作手順に関する参考文献をまとめましたので、ご覧下さい。 [GO ->]


注釈
  1. PCRプライマーは、脱保護グレードのもので十分である。
  2. PCR反応は、30サイクル以上は行わないで下さい。プライマーダイマーが形成される可能性があります。
  3. E1遺伝子検出のためのポジティブコントロールとしては、293細胞を用いて下さい。


RCA混入検査のための感染細胞の調製


1. -80oCで保存されているウイルス液を取り出す。
(当バンクでは継代により力価を上げたウイルス液を使用している。)
2. 37oC water bathで溶かす。
Virusが凝集しているので、十分にボルテックスを行う。
3. 5% FCS-DMEM 500μlにウイルス液10μlを加えたものを準備する。
4. あらかじめHeLa細胞を24穴プレートで500μlの10% FCS-DMEM液中で培養し、ほぼ80% confluentになっていることを確認する。
5. 培養上清を取り除く。
6. 細胞に操作3の液をすべて(約510μl/well )加える。
7. CO2 incubatorで3-5日まで培養する。
この間、1日毎に顕微鏡で細胞を観察する。RCAの混在する組換えアデノウイルスにおいては、細胞の形態に変化が現れる。
8. 培養上清を取り除く。このとき細胞ははがれやすくなっているので静かに操作すること。
9. 細胞をはがさないようにPBS(-) 500μl/wellで細胞をwashする。
10. 0.02% EDTA-PBS(-) 200μl/well を加える。
37oCで10分間ほど置く(細胞が丸くなるのを顕微鏡下で確認する)。
11. さらにPBS(-) 500μl/wellを加えてピペッテイングして細胞をはがし、1.5 mlマイクロチューブに回収する。
12. 14,000 rpm, 4oC, 1 minで遠心する。
13. 上清を取り除く。
14. 回収した感染細胞(cell pack)からDNAを抽出する。
(「アデノウイルス感染細胞からの全DNAの抽出」の項目を参照)

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アデノウイルス感染細胞からの全DNA抽出


以下に示すのは24-well plateでの操作です。

Cell packの作製

  • HEK293細胞の場合
    1. 1000ulのマイクロピペッターのメモリを400ul位に合わせ、1 wellから死細胞を培養液とともに1.5mlマイクロチューブに回収する。
    2. 3,300g、4℃、5分の遠心により死滅した細胞をペレット状にして上清を捨て、-80℃に保存する (cell pack)。
  • HeLa細胞の場合
    1. 24-well plateの培養液を取り除き、300ulのPBS(-)で洗い、300ulの0.02% EDTA-PBS(-)をウェルに入れ、37℃、3分のインキュベーションの後、細胞がはがれないように取り除き、細胞を300ulのPBS(-)ではがして1.5mlマイクロチューブに回収する。
    2. 3,300g、4℃、5分の遠心により死滅した細胞をペレット状にして上清を捨て、-80℃に保存する (cell pack)。
Cell packからの全DNA抽出
  1. 反応液を調製する。
    TNE 400 ul
    Proteinase K (10 mg/ml) 4 ul
    *TNE:50 mM Tris-HCl (pH 7.5), 100 mM NaCl, 10 mM EDTA (pH 7.5)
  2. 反応液を感染細胞ならびに非感染細胞 (negative control)のチューブに加え、10-15分間激しく振り混ぜる。ボルテックスをかけても良い。この時、白い糸屑の様な蛋白質が見えるのを確認する。
  3. 4 ulの10% SDSを加え、泡立たないようにゆっくり転倒混和する。
  4. 50℃で1.5-2時間反応させる。反応は2時間を超えないこと。糸屑状の蛋白質が見えなくなっていることを確認する。
  5. 等量のフェノール/クロロホルム処理を2回行う。
  6. 等量のクロロホルム処理を2回行う。
  7. 等量のエタノールと1/10量の3M NaOAc (pH5.2)を加え、エタノール沈澱を行う。
  8. 遠心によりDNA を沈澱し、上清を取り除く。
  9. 乾燥しすぎるとDNA が溶けなくなるので、キムワイプでこよりを作成し、余分なEtOH を吸い取る
  10. 得たDNAを50 ul TE-RNase (20 mg/ml RNaseA)に溶かす。


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4-1. 染色体DNAを含むアデノウイルスゲノムDNAの制限酵素切断


1. アデノウイルスゲノム DNAを切断する酵素の中で認識配列に CG を含む酵素(例えばXhoI, ClaI, SnaBI)で切断し、アガロースゲル電気泳動を行う。
DNA8 ul
10x buffer1 ul
enzyme1 ul
Total vol. 10 ul
2. 少なくとも2時間、37oCで反応する。
3. 10×Loading bufferを1ul加える。
4. 全量を使用し、アガロースゲル電気泳動を行う。

注釈1:切断パターンは、塩基配列をもとにあらかじめ調べておく。細胞の染色体 DNA には、 CG があまり含まれないので細胞の染色体 DNAは、ほとんど切れない。
注釈2:uncut DNA も電気泳動を行う。

4-2. PCR 法による挿入遺伝子の確認

作業日:______________________

クローン名:______________________

担当者:______________________

1. 鋳型DNAを滅菌水を使用し、50倍希釈する。

2. 以下の反応液を調製する。
    50×Template1.0 ul
    10×Buffer (KOD Plus)2.0 ul
    10 uM forward primer0.2 ul
    10 uM reverse primer0.2 ul
    H2O13.6 ul
    25 mM MgSO40.8 ul
    2 mM dNTP2.0 ul
    KOD Plus0.2 ul
    Total20.0 ul
    Primer set 1:PAXCAF1, PAXCAR1
    Primer set 2:PAXCALNLF1, PAXCAR1

3. 以下の条件で反応を行う。
    PCR 反応
    1 cycle96oC5 min.
    96oC30 sec.
    30 cycles60oC15 sec.
    68oC__ min/kb

    PCR Program File_____
    Link File_____
4. PCR産物10 ulをアガロースゲル電気泳動し、増幅産物と挿入遺伝子の大きさと比較する。

4-3. PCR 法によるRCAの確認

作業日:______________________

クローン名:______________________

担当者:______________________

1. 鋳型DNAを滅菌水を使用し、50倍希釈する。

2. 以下の反応液を調製する。
    50×Template1.0 ul
    10×Buffer (KOD Plus)2.0 ul
    10 uM forward primer0.2 ul
    10 uM reverse primer0.2 ul
    H2O13.6 ul
    25 mM MgSO40.8 ul
    2 mM dNTP2.0 ul
    KOD Plus0.2 ul
    Total20.0 ul
    Primer set 1: E1AF2, E1AR2
    Primer set 2: E1BF1, E1BR1
3. 以下の条件で反応を行う。
    PCR 反応
    1 cycle96oC5 min.
    96oC30 sec.
    30 cycles60oC15 sec.
    68oC2 min/kb

    PCR Program File_____
    Link File_____
4. PCR産物10 ulをアガロースゲル電気泳動し、増幅産物と挿入遺伝子の大きさと比較する。相当するバンドが存在すれば、RCA混入の可能性が高い。


Table 1. Examples of PCR Primer to Detect Adenovirus
namepositionasequenceVID of RVD
Detection of E1A
E1AF1b560-5955'-ATG AGA CAT ATT ATC TGC CAC GGA GGT GTT ATT AC-3'S00797
E1AF2c626-6615'-CTG ATC GAA GAG GTA CTG GCT GAT AAT CTT CCA CC-3' 
E1AR2b1545-15115'-TTA TGG CCT GGG GCG TTT ACA GCT CAA GTC CAA AG-3'S00797
jpz1d880-8995'-GGGTCCGGTTTCTATGCCAA-3'S00026
jpz2d1099-10775'-GCCACAGGTCCTCATATAGCAAA-3'S00026
Detection of E1B
E1BF1c2002-20355'-AGT TTT ATA AAG GAT AAA TGG AGC GAA GAA ACC C-3' 
E1BF2c2097-21315'-ACA CAA GAA TCG CCT GCT ACT GTT GTC TTC CGT CC-3'S00796
E1BR1c2495-24625'-AGT GGT CAG CTG CTC TAT GGA ATA CTT CTG CGC G-3' 
E1BR2c3156-31225'-TGC GAG AGT GGC TGG CTA CGT GAA TGG TCT TCA GC-3'S00796
E1BR3c3285-32515'-TGC TCT CGG GCT CAA GCA ATA TCT TAG TGT GAC TC-3' 
jpz3d2392-24135'-CCAGACACCGTCCTGAGTGTAT-3'S00027
jpz4d2628-26075'-CGTTCCCAGAAATGTAGCAACA-3'S00027
Detection of pIX
jpz5d3473-34945'-CGCTGAGTTTGGCTCTAGCGAT-3'S00028
jpz6d3698-36795'-CATCACATTCTGACGCACCC-3'S00028
Detection of insert cDNA in CAG expression unit
PAXCAF1 5'-GGCTTCTGGCGTGTGACCGGC-3'  
PAXCALNLF1 5'-CACTGCATTCTAGTTGTGGTTTGTCC-3'  
PAXCAR1 5'-CAGAGGGAAAAAGATCTCAGTGG-3'  
aPositions of nucleotide sequences correspond to those of the nucleotide sequence of human adenovirus type 5 (Genbank accession number M73260).
bUgai et al., 2003.
cSuzuki et al., 2004.
dZhu et al., 1999.

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References
  1. Suzuki, E., Murata, T., Watanabe, S., Kujime, Y., Hirose, M., Pan, J., Yamazaki, T., Ugai, H., Yokoyama, K.K. (2004) A simple method for the simultaneous detection of E1A and E1B in adenovirus stocks. Oncol. Rep. 11: 173-178.

  2. Ugai, H., Suzuki, E., Inabe, K., Murata, T., Hamada, H., Yokoyama, K.K. (2003) Spontaneous mutations in the human gene for p53 in recombinant adenovirus during multiple passages in human embryonic kidney 293 cells. Biochem. Biophys. Res. Commun. 300: 448-456.

  3. Zhu, J., Grace, M., Casale, J., Chang, A.T., Musco, M.L., Bordens, R., Greenberg, R., Schaefer, E., Indelicato, S.R. (1999) Characterization of replication-competent adenovirus isolates from large-scale production of a recombinant adenoviral vector. Hum. Gene. Ther. 10: 113-121.

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2010.05.19